中小企業診断士試験制度が、2026年度から大きく変わる見込みです。
最大のポイントは 「口述試験の廃止」。
これにより、受験プロセスや合格後のキャリア形成にどんな影響が出るのでしょうか。
本記事では、一次試験・二次試験(筆記)への影響をわかりやすく整理し、
受験生が“今すぐ準備すべき対応策”までまとめてお伝えします。
■ なぜ口述試験が廃止されるのか?
日本診断士協会連合会の報告書によると、主な理由は次の通りです。
- 形骸化していた
過去10年での不合格者はほぼゼロ(欠席以外は3名程度)。
適性評価として機能していないと判断。 - 受験者・運営側双方の負担軽減
会場確保・人件費などのコストが増加し続け、制度見直しが必要に。 - 実務補習・実務従事で適性評価を代替できる
口述で確認していたコミュニケーション能力や態度は、
今後は実務補習で確認すれば十分という方針。
つまり、制度の合理化・効率化が主な背景です。
■ 口述試験廃止で起きる「一次試験」への影響
① 一次試験の重要度がわずかに上がる可能性
口述がなくなることで、
「一次 → 二次筆記 → 即合格」という最短ルートになります。
一次試験はこれまで通りの難易度ですが、
筆記重視の流れから、一次での基礎力の重要性は増すと予想されます。
② スケジュールの見直しが必要
これまで口述試験があった「12月中旬〜1月」の学習期間がなくなるため、
一次対策〜二次対策の年間プランを組み直す必要が出てきます。
③ 知識の「実用性」と「応用力」の強化
これまでは、第1次試験の知識は第2次試験の土台という位置づけでしたが、今後は、第1次試験の知識を第2次試験の論述の裏付けとして活用できるか、その応用力がより問われるようになります。
多肢選択式問題への応用訓練:過去問を解く際、なぜその選択肢が正解・不正解なのかを第2次試験の視点(診断士としての助言の視点)から深く考察する習慣をつけましょう。
【予想される変化】:
・特に「企業経営理論」「運営管理」「財務・会計」など、第2次試験に直結する科目の出題において、知識を暗記しただけでは解けない事例ベースの応用問題が増加する可能性があります。
・知識の有無だけでなく、その知識を「事例」に応用して診断や助言を導くプロセスを理解しているかが問われる傾向が強まります。
【対応としてすべきこと】:
・知識の「縦の連携」を意識した学習:第1次試験の知識を学習する際、「この知識は第2次試験のどの事例の、どのような助言に使えるか」を常に意識して学習してください。
・多肢選択式問題への応用訓練:過去問を解く際、なぜその選択肢が正解・不正解なのかを第2次試験の視点(診断士としての助言の視点)から深く考察する習慣をつけましょう。
■ 口述試験廃止で起きる「二次試験(筆記)」への影響
ここが最も大きなポイントです。
① 二次筆記の合格が“完全に最終選抜”になる
これまでは「筆記合格 → 口述で最終確認」でした。
しかし、2026年度以降は 筆記が事実上の最終試験 になります。
そのため、
- 解答の論理性
- 説明の整合性
- 日本語表現の精度
といった 文章による診断力の評価がより重視される と考えられます。
② 筆記試験の採点基準がやや厳格化する可能性
口述で調整されていた部分がなくなるため、
- 曖昧な答案
- 論理飛躍のある文章
- 因果が弱い指摘
などは、これまで以上に点数を落とすリスクがあります。
③ 論理性の徹底的な厳格化
わずか10分の口述試験では、筆記で書ききれなかった部分や、解答の論理構造の脆弱性を面接官が確認し、補完する機能がありました。廃止後は、筆記試験の解答に、与件文の分析から結論までの一貫した論理構造が、より徹底的に要求されるでしょう。
- 予想される変化:
- 採点基準が、これまでの「知識の再現性」から「診断士としての助言能力」の観点でより厳しく評価されることが予想されます。
- 解答は、単なる知識の羅列ではなく、「与件企業の状況を踏まえ、課題解決に繋がる具体的な助言」で構成することが、今まで以上に求められます。
4-2. 倫理観・実務家としての意思決定能力を問う出題
口述で補完されていた診断士としての倫理観や専門家としての立ち居振る舞いを試す要素が、筆記試験の設問や解答要求に組み込まれる可能性があります。
実務補習の視点を取り入れた対策:解答が「机上の空論」ではなく、**「実務で通用するレベルの具体性」を持っているかを意識して過去問や演習に取り組んでください。解答作成後には、「もし私がクライアントだったら、この助言を実行できるか」**という視点で自己評価を行いましょう。
【予想される変化】:
・「貴方がもしこの企業の社長であれば、どのような行動をとるか」といった実務家としての意思決定能力を問う問題や、「地域社会への貢献」など、多角的な視点や倫理観を求められる問題が増えるかもしれません。
【対応としてすべきこと】:
・「診断士の立場」の徹底:解答作成時には、常に「なぜその助言をするのか」という背景にある倫理的・論理的判断を明確に持ちながら記述する訓練が必要です。
・実務補習の視点を取り入れた対策:解答が「机上の空論」ではなく、「実務で通用するレベルの具体性」を持っているかを意識して過去問や演習に取り組んでください。解答作成後には、「もし私がクライアントだったら、この助言を実行できるか」という視点で自己評価を行いましょう。
④ 合格発表が早まる可能性
面接日程が消えるため、運営スケジュールに余裕ができます。
合格者にとっては、実務補習や事務所設立準備を早く開始できるメリットがあります。
■ 懸念点:診断士としての「対人スキル」評価はどうなる?
口述試験は形骸化していたとはいえ、
- 礼節
- 質問への反応力
- 思考の瞬発力
- コンサル姿勢
などを確認する場でもありました。
廃止により、
“筆記は強いがコミュニケーションは弱い診断士”が増える懸念
は確かに指摘されています。
今後は、
- 実務補習
- 実務従事
- 研修制度
で補完していく流れになるでしょう。
■ 2026年度からの制度変更にどう対応すべきか?
ここが最も重要です。
受験生として、次の4つの対応を強くおすすめします。
① 二次筆記「文章で伝える力」を徹底強化する
- 因果関係を明確に書く
- 課題 → 効果 → 提案の流れを明確にする
- 誰が読んでも理解できる日本語を書く
特に事例Ⅰ〜Ⅲでは「読みやすい論理構造」、
事例Ⅳでは「計算+文章説明」がこれまで以上に重視される可能性大。
② 実務力・コミュニケーション力を別で鍛える
口述がなくなるからこそ、合格後の現場で困らないよう、
- 模擬プレゼン
- ロールプレイ
- コンサル実習
- 企業ヒアリングの練習
などを自主的に取り入れることが重要です。
③ 学習スケジュールの再設計
口述対策期間がなくなるため、
年間の学習戦略は次のように変わります。
- これまでより早く二次対策を開始できる(翌年の対策)
- 11〜12月の学習停滞が起きにくい
- 合格後の準備期間が増える
計画性を高めれば、全体の学習効率はむしろ上がります。
④ 制度変更の最新情報を常にチェック
診断士試験制度は今後も細部の見直しが続く可能性があります。
- 合格基準
- 配点
- 受験料
- 実務補習の扱い
変更の影響が学習戦略に直結するため、
情報収集は欠かせません。
■ まとめ:2026年以降は「筆記一本勝負」の時代へ
口述試験廃止により、中小企業診断士試験は
“筆記による論理力・文章力”を最も重視する試験へと進化します。
だからこそ、受験生に求められるのは
- 論理的に考え
- コンパクトにまとめ
- 文章で相手に伝える力
です。
一方で、診断士に不可欠な“対人力”は合格後に求められるため、
自主的に鍛える姿勢がこれまで以上に重要になります。
試験制度は変わっても、
「企業の成長・再生を支援する専門家」という診断士の本質は変わりません。
これからは、小手先のテクニックではなく、論理の一貫性、プロフェッショナルとしての判断力、知識の応用力という、「診断士としての本質的な能力」を筆記試験で徹底的に磨き上げることが、合格への絶対条件となります。この変化をチャンスと捉え、より質の高い学習に取り組んでいきましょう。
2026年度以降の変化をチャンスに変え、
戦略的に合格へ近づいていきましょう。

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